「初心者のためのカミキリ入門」
写真は日本のシンボルカミキリであるルリボシカミキリです。こんなカミキリが日本にいるんです。
東京都産
小学1年の時 学校へ昆虫のハンドブックを毎日持って行き先生に叱られたことを覚えている。
周辺にいる蝶やトンボをとっていた。
でも近くに虫にくわしい人がいなかったので、普通の男の子のように
興味を持っただけで終わった。カミキリはゴマダラカミキリを見ただけで
友達の採ったミヤマカミキリやシロスジカミキリがうらやましいと思った。
そして図鑑にあった「ルリボシカミキリ」(左の写真)は強く記憶の中に残っていた。
こんな奇麗なカミキリが本当にいるのか?。見てみたい。
また採集しても標本は色褪せて完全に生きた時の色をとどめることができないので
採集してもむなしいと思った。
その後小生はそのまま虫とは縁のない世界にいて、38歳になったとき
妻から虫をプラスチックに封印して文鎮にできるキットが市販されていると聞き、
もしかしたら標本を色褪せせずに封印できるかなと思い。
なぜか突然採集をしたくなった。
さっそく採集に関する本を図書館から何冊も借りて多読した。
蝶よりは甲虫の方が自然に近いまま封印できる。
まずはコガネムシが見たかった。しかし都会の公園を見て回るが1頭も見つけることができなかった。
そこで1992年6月27日採集に出る決心をした。
採集のガイドブックを見て山梨県の大菩薩を選んだ。
甲虫を採るのにネットはいらないと思っているくらいのズブの素人が玄人の採集地に出かけるなんて今思えば無謀。
ナガタマムシの仲間、ジョウカイ、クロハナカミキリを採っただけに終わる。
これが小生のカミキリの採集第1号である。
あとでわかったのであるが平地にいるカミキリ(ゴマダラ、シロスジ他)は採ろうと思っても採れない。
普通種ではあるが環境の変化が著しくてほとんど偶然でしか採れない。山にいる珍品の方が楽に採れることがわかった。
その他最初の誤解はカミキリは見事に人の目から隠れている。なかなか姿を現さない。
そして1993年埼玉県でアオカミキリを採集して、しばらく埼玉県に通う。1996年に埼玉県でオオアオカミキリとギガンテアを採集。
埼玉県での自採集を200種で見切りをつけて、2000年からネキ制覇へ。2004年日本産ネキ及びアオカミキリ族全種制覇。
日本産ベニボシを2種採集。木曽御嶽山3種の神器(スミイロ、オトメ、サハリン)採集。現在自採集700種(亜種も含む)をめざしています。
それは虫の同好会に入って先輩に教わるのが確実です。
日本鞘翅学会、神奈川昆虫談話会(神昆)がおすすめです。
名だたるカミキリ屋と出会うことができます。
なぜか神昆の方は、皆様気さくで教え上手だから、一人一話の時に「教えて下さい」と言えば多くの事を学べる。
読み物で推薦するのは、月刊むしのバックナンバ−で藤田宏氏の「カミキリ採集のハイテクニック」です。
1978年のNO87から1979年のNO99にかけて8回シリ−ズで、
カミキリの採集道具から標本作成まですべてを網羅しています。
そして小生のバイブル「カミキリニュ−ス」。1991年で廃刊されたのは残念です。
これを今でも読めばカミキリをますます採りたくなる。
現在「天牛通信」とメールマガジンカミキリ通信を発行していますので、ご参考に。
ネットだけでカミキリについて語り合い勉強できるミクシーで「カミキリ星人クラブ」も本当に細々と運営しています。
見てほしい日本にいる綺麗なカミキリ
カミキリ屋の天敵(ハブ、熊、ダニ、ヒルその他)=>その対処法 天牛通信14号
これからお伝えすることはあくまでも原則として聞いていただきたい。
例外は必ずあります。また場所は関東での採集という条件とします。
カミキリムシはカミキリ図鑑のように日本だけで約千種類がいて、他の虫より気まぐれ屋が多い。
成虫で短期間しか生きないもの、数年に1度しか成虫にならないものもある。
狙いたいカミキリの採れる時期が約一週間なんてものがいる。
彼らが生活の糧とする植物、主に樹木(これをホストと言う)の状態に非常に左右される。
例えば1998年は季節が約1ヶ月程度早く春や夏になった。
このようにして毎年の採集時期を軌道修正しなけらばならない。
さらに去年採れた場所で今年も採れるとは限らない。
ホストの樹木に万遍なくいるのではなく、その中のわずか1本のホストに集中して成虫が発生することが多い。
春はカエデやモミジ類の赤い小さい花、コデマリの花、クリの花。
夏はノリウツギ、リュウブ、ショウマなどの白い花。
午前9時−11時までに多くの種類のカミキリがこれらの花に集まります。
快晴が良く、曇りも可。
午前中ずっと雨で午後から晴れだした場合は午後にカミキリが多く集まる例外もある。
ネットが必要です。
ネットの棒の長さは少なくとも5m以上必要。
カエデ、リョウブ、クリは5メ−トル以上の高さに花があり、非常に視力の良い人が有利だが、筆者は双眼鏡で確認している。
花にうまく隠れている場合もあるので広いネットに花をすっぽり被せてネットを揺する(スイ−ピング)のがスタンダ−ドな方法だが、筆者はこれをやると花がなくなり次のカミキリの訪花の妨げになるので最後の手段で行うことにしている。
ネットの棒は釣り具屋の物が安価で結構使えます。
強風だとカミキリは飛翔力が弱いものが多いので訪花しません。
日陰より日の射している花がよりよい。(日陰を好む仲間もいる。)
花が咲いていると全部の花に来ているのではなく、どこかの花に集中している。
良い条件でもまったく来てない花もあります。
気象の影響か?昨日は訪花して今日は訪花していないなどもある。
花がなければ、生け花を持って行き採集する方法もあります。
花上はオスとメスが出会う場所でもある。
営林署など貯木場に置かれた伐採木、民家に積んであるマキにカミキリは集まる。
この場所を土場といいます。
また、この材のある周辺に薮や木などがあればその草や葉によく潜んでいます。
山へ行き地元の人に尋ねると良い貯木場に出会うことがある。
筆者は貯木場を見つけたら少々遠くから10分程度、材を観察してカミキリが来ているか確認します。
来ていれば刑事のように張り込みします。
材に飛来するのを午後の方が多い。
午前中は花に来ていて午後から材に移動するカミキリが多いのではないでしょうか。
当たり前の話しだがカミキリは産卵のために材に飛来します。
ここでオスも交尾のためにメスを待ち構えています。
最後に交尾したオスのものが有効となるので、メスが産卵するまで他のオスに交尾させないようにオスはいつまでも交尾している種もいます。
材は一般に広葉樹の方が集まる種類は多く、材の中で家の廃材、外国産の輸入材、貝のついている材ではカミキリに出会った経験はない。
カミキリによって好みの木があるので先輩などに聞いて覚えることがが重要だが、この伐採木がなんという樹木なのか覚えるのは非常に難しい。
タマムシ類が好むような、切って半年程度の新鮮な材からボロボロに朽ちた材、伐採木ではなく生木食いなどそれぞれカミキリにより好みがある。
異常に鳥の多い貯木場は鳥に食べられているのか?カミキリに出会ったことはない。
又は陽があたらない暗い所ではカミキリはカビに弱いので非常に少ない。
夜はライトでこれらの材やあらかじめ昼間見つけておいた立ち枯れ状態の木を見て回ると違った種類(夜行性)のカミキリと出会う。
材の採取
冬や早春にカミキリの幼虫やさなぎの入った材を家へ持ち帰って成虫にさせるのはカミキリ屋でもっとも普及している採集法だ。
幼虫がいる材の見分け方は樹皮を剥がせばカミキリの食い痕かわかる。
さらに幼虫を材から取り出して、安全な材に埋め込みなおすのはカミキリを羽脱(成虫になって材から脱出する)させる確実なやり方である。
寄生する蜂の卵やカミキリの幼虫を食べるコメツキムシの幼虫を避けることができる。
さなぎは濡らしたティッシュで成虫にさせる。
この材採取法もいろいろと微妙にカミキリによって違い非常に奥が深いので材を得意とする先輩に聞くのがよい。
3.ライト
カミキリは明かりに集まる習性がある。ほとんどの種が集まるようだ。現在研究中。
集まる場所は街灯近くの白い壁、駅構内、高速道路のサ−ビスエリアなどが良いが、
必ず周辺にカミキリムシが生息する林や森があること。
筆者は発電機を使って電灯を白い幕の張った中心に置くライトトラップを行っている。
待つだけの採集のわりに意外にカミキリが採れる。
ライトトラップで過去に数回、新種のカミキリが発見されている。
なるべく月がでていない曇りの蒸し暑い夜がベスト。
どしゃぶりの雨の中でもよくライトに飛んで来ます。
満月はいつなのかとか気象情報などを考えてライトに適した日を選ぶ。
カミキリは用心深く人目を気にします。ライトの周りに隠れていることが多いのでよく探すこと。
大型種は夜1時以降に来ます。夜明け前と薄暮にだけ来る種類もいます。
写真は遠征用の簡単ライトラップ
南西諸島などへ宅配便で送って使用している。
ブラックライトと水銀灯、ネットの竿を利用して白幕(風通しのよいレース)をかけている。
発電機もカバンサイズ、赤いスタンドは短くたたむことができる。
新たなライトトラップ試行日記 2012年5月よりスタート
4.その他
カミキリ採集の基本は叩き網です。忘れずに!
*誘因剤によるカミキリトラップが非常に有効です。
但し早く虫を回収しないと水の中で半腐り状態となります。
*メスを虫かごに入れてオスを大量に採集する方法もある。
*日向ぼっこに来るカミキリを狙う。
特に白やメタルグレイ色の車にはトラカミキリ族がよく来るので駐車している車を見回る。
*小雨の日にしか草むらに静止しないカミキリを採る。
*山の頂上付近に風の吹き上げで飛ばされたカミキリを狙う(吹き上げ法)。
5.飼育して
小生はゴマダラカミキリの成虫を採って約8ヶ月飼育させた経験がある。シャワ−が好きでキ−キ−と言って喜んでいた。
虫を飼ってみると生態などがよくわかり、採集のヒントを与えてくれる。ルリボシカミキリを11月まで長生きをしたが
メロンがとても好物だった。
6.毒びん
カミキリを採って毒ビンで殺すのが普通であり、その場合の薬品は酢酸エチル、
亜硫酸ガスなどを使うが、カミキリの中でこれらの薬品に入れるとせっかくの鮮やか色が黒くなる仲間がいる。
美麗種に多く、これらの場合は冷蔵庫で冷凍死させるか、自然死させるしか手がない。
どのカミキリがうまくいかないかはよく調べられているのでお知りになりたい方はお尋ね下さい。
筆者はタッパ−ウェアの携帯水筒を毒ビン代わりに使っている。
酢酸エチルは一週間持続しています。
ビン製は割れたり、重いし、
口が広すぎて薬品の拡散を早くするので使いづらい。
7.カミキリが他の虫と違う点
くりかえすがカミキリムシ図鑑のように日本にはカミキリムシは約1000種いて
その中でも種別にスペシャリストがいる。
蝶の次に愛好家が多く、他の甲虫よりよく調査されていて、採集方法が確立されている。
生態がわかれば採れる確率が高くなります。
つまりいつ頃どんなホストに産卵するか、幼虫のホストでの暮らし方、ホストの食べ方、いつ成虫になるか、後食と言って成虫になったあとに植物を食べるがその食い痕がどんな特徴かなど、
これらのカミキリの生態がわかれば出会える確率が高くなる。
そしてこれらの生態はほとんど解明されている。
採りたいものが努力すれば意外に採れるのが他の虫と違う点である。
8.カミキリの名前探しで、お役に立てれば
同定依頼のマナー
同定、ここでまごつく
初心者にとって必要な本
るどるふさんの本 「へなちょこカミキリロード
- 初心者のためのカミキリムシ入門 -」
1.採集
月刊むし「カミキリ採集のハイテクニック」シリーズ
カミキリニュース 絶版
月刊むしのその他記事
2.材や幼虫
図説「長野県のカミキリムシ」
日本民俗資料館
カミキリムシの観察と飼育
小島圭三 ニューサイエンス社 幼虫の食樹別一覧
月刊むしでの記事
3.図鑑
日本産カミキリ大図鑑(高桑図鑑)
1984 復刻版予約中 南陽堂
日本産カミキリムシ検索図説 1992
東海大学出版会
日本産カミキリムシ 大林延夫・新里達也編 東海大学出版会発行 2007