O嶽山のコブ達
真部永地(eichan)
2012.09.21-23
O嶽山の北東部でタニグチコブヤハズとチュウブマヤサンコブヤハズが接するということだけを頼りに
混生地探しを始めたのが、2009年10月のこと。
まずはK田高原のK田登山口周辺で探索。少ないながらもタニグチが採れた。
接点はもっと北かとK田高原Mスキー場に移動したが、カラマツの植林が拡がるのを見て、素通り。
県境を越えて北麓を西へ。
Cスキー場を過ぎて県道が狭くなってくると、コブ好みの雰囲気。
ここもタニグチばかりだった。
チュウブマヤサンは北麓の標高の低い所から上に生息域を広げているのだろうと考えた。
2010年にCスキー場から北に下っていった。
標高1600mまではタニグチが採れたが、そこから下ではどちらも見つからず。
H田高原でようやくチュウブマヤサンが採れた。
ここから上に分布を広げるとなると、S沢がバリアになるので、S沢右岸を上って行ったのだろうと目星をつけた。
2011年の夏、山梨県で出会ったKさんからS沢の源流で混生していることと、
K田高原Mスキー場でも混生していることを聞いた。
K田高原Mスキー場の南のK田登山口でタニグチが採れているのだから、
Mスキー場辺りが逆側の境界になっていて当然である。
ただし、Mスキー場のどの辺りかはわからない。
地図を眺めて、一番南側の一番深い谷が境界ではないかと考えた。
2011年秋は、S沢の源流左岸でチュウブマヤサンが採れ、混生確認ができた。
で、今年はS沢左岸沿いの登山道と、Mスキー場周辺の調査を行うこととし、8月末に第1回調査に行ったが、
残暑が厳しく、まだようやく発生し始めたところで、K田登山口付近でタニグチが1つ採れただけだった。
仕方がないので下見に徹して、枝を折ってはササに差し込んで簡易トラップを仕掛けておいた。
さて、9/21(金)〜9/23(日)、ムシ屋が多く入りそうなS沢左岸沿いの調査を金曜にするべきだが、
S沢左岸沿いの状況はほぼ掴めているので、Mスキー場周辺調査に重点を置き、
9/21・23をMスキー場周辺調査、9/22をS沢調査とした。
Mスキー場の北側から調査を開始した。
が、歩き始めて30分も経たずに、3つ目のトラップでタニグチ♂が落ちてきた。
ここは当然チュウブマヤサンだろうと思っていたので、意外だった。
思いの外、分布境界は北にあるようだ。
急遽、スキー場上部の北側エリアを重点的に調査することにした。
スキー場上部の林道(標高約1800m)の最深部の手前で立て続けに2ペアが落ちてきた。
チビ♂はチュウブマヤサンのようだが、残りの1♂2♀はエリトラ先端突起が半端に発達し、
特に♂は細身でチュウブマヤサンっぽいが、紋が大きく、紋に顆粒がほとんどない。
なんとも微妙だ。
地図を見ると、ここからS沢源流は目と鼻の先だ。
どうやらS沢源流には南北両側からタニグチが迫り、中間タイプが安定的に生息しているようだ。
というより、2010年に考えた通り、H田高原からS沢右岸沿いにチュウブマヤサンが生息域を広げ、
タニグチ生息域に侵入しているのだろう。
9/22、その辺りを確かめるべく、S沢左岸沿いの登山道調査へ。
が、案の定先行者がいた。
登り始めてしばらくは、トラップがことごとく叩き散らされている。
他のめぼしい所も叩かれているようで、ゴミムシすらほとんど落ちない。
仕方なく登山道から外れて、コケと落ち葉のフカフカ絨毯を踏み抜いて肝を冷やしながら、
ようやくタニグチ♂を落とした。
登山道も2/3ほど登り、上の林道が近付いてくると、見落としのトラップが残され、
めぼしい所を叩くと、雑虫が多数落ちてくるようになった。
と、トラップから立て続けにタニグチ♀が2頭落ちてきた。
さらに叩きにくい所に引っ掛かったオオカメノキの良さげな枯葉を手に取ると、もう1頭落ちてシダの葉上に。
マヤサン体型にタニグチの紋を持つ♂だった。
ここで、上から人の話し声が聞こえてきた。
登ると、先行者が下りてきた。
7頭採れたそうだ。先行者が7頭に対して、後追いでの4頭はまずまずかな。
9/23は早朝からMスキー場の南側を中心に調査するはずが、生憎の雨w
タニグチ1♂2♀が採れたところで撤収した。
やはり南側(深い谷よりは北)はタニグチエリアのようだ。
さてここで、これまでの調査に基づく、私的見解。
ここの境界エリアでは、タニグチ、マヤサン両種とも共存しているが、
接点では両種の個体数に比べて、中間形態の個体の割合が高く、雑種が繁殖している印象だ。
つまり、マヤサンとタニグチの分化は亜種レベルで、別種にはなっていないように思える。
他のコブ達の関係についても、仮説を持っているが、調査不十分なので、
もう少し調査できてから投稿することにしよう。
ps.カミキリ通信掲載後に月刊むし No. 376 (2002) カミキリ特集号2を入手した。
10年前の同地域と分布比較をすると、マヤサンが中間個体エリアに分布を広げ、
タニグチエリアに中間個体が出現していることが分かった。
明らかにマヤサンが分布域を拡大している。
2013.1.11 記